
広島市安佐南区・大町駅のほど近くに、本格的なスパイスカレーを味わえるお店があるのをご存知でしょうか。『Spice magic(スパイスマジック)』は、地元の方はもちろん、県外から足を運ぶお客様、さらには本場の味を求めてインド出身の方までもが訪れる人気店です。今回はそんなお店の魅力について、店主・アルンさんと妻・桜子さんにお話を伺いました。


30種類以上のスパイスが生む味
北インドニューデリー出身のアルンさんは、10代の頃から「いつか海外で本場のインド料理店を開く」という夢を持ち、19歳でドバイへ渡り修行を重ねました。その後、日本に長く住んでいた知人の紹介で来日し、広島市内のインド料理店で11年間勤務。2023年、ついに念願の本格インド料理専門店を桜子さんとともにオープンしました。

味の決め手となるスパイスは30種類以上を使用。インドではスパイスは、日本人にとってのみそやしょうゆのように欠かせない調味料で、辛さだけでなく香りや風味を幾重にも重ねる役割があります。
地域や素材によってスパイスの配合が異なるため、同じカレーといえど味わいに個性が生まれるのが魅力。さらに日本のカレーと違い小麦粉を使わないため、とろみが少なく、素材の味とスパイスの香りをしっかりと感じられるのも特徴です。

こうした本場の味を求めて、地域の常連さんはもちろん、県内外から多くの方が訪れます。インドの方が故郷の味を求めて足を運ぶこともあり、なかには現地流にならって“手で食べる”という通な小学生までいるのだとか。
本場の味を楽しむおすすめメニュー
看板メニューはランチ限定の「3種カレーミールス」。日替わりのカレー3種類と副菜をワンプレートに盛り合わせた、満足感たっぷりの一皿です。この日は、香り豊かなホールスパイスを使った「オリジナルチキン」、ココナツミルクでまろやかに仕上げた「ココナツホタテ」、そして南インドの家庭料理として親しまれる、豆と野菜をじっくり煮込んだ「野菜サンバル」が並びます。それぞれまったく違った味わいで、一品ずつじっくり楽しむのはもちろん、混ぜ合わせるとまた別の表情が生まれます。


もう一つの人気メニューが、インド式炊き込みごはん「ビリヤニ」。スパイスとお米を一緒に炊き上げる料理で、提供される種類は月替わり・日替わりで変わるそうです。この日のビリヤニは南インド発祥の「コングナードゥ・ヴェッライ・ビリヤニ」。ココナツミルクで炊き上げることで、しっとりとまろやかな口当たりに仕上がります。グリーンチリ、カルパシ、シナモンなどのスパイスを使っていますが、辛さはほとんどなく、優しい味わいが楽しめます。

一口に“インドカレー”と言っても、地域によって味わいは大きく異なります。北インドではバターやギーを使った濃厚なカレーが主流ですが、南インドはさらっとしたスープ状のカレーが多く、スパイスの香りや素材の味をじっくり楽しむ料理が中心です。
また、日本ではおなじみの「ナン」も、現地ではほとんど食べられていないそう。桜子さんによれば「お赤飯より珍しいくらい」とのこと。ただし、日本のお客様からの要望が多いため、金・土のディナー限定で提供しています。
ほかにも南インドの伝統料理「ドーサ」も人気の一品。米とウラド豆を発酵させた生地を薄くクレープ状に焼いたもので、香ばしく軽い食感が魅力です。こちらは水曜日と土曜日限定の提供。聞き馴染みのある料理から、初めて耳にするメニューまで揃っており、さまざまな味わいを楽しむことができます。

広がる“スパイスの文化”
『Spice magic』では月に一度のペースで、料理教室を開催。本場のインド料理の作り方を教えており、「本場の味を一人でも多くの方に知ってほしい」という思いから始めたそうです。

2025年12月には、広島市安佐北区にテイクアウトをメインとした2号店のオープンも決定。今後は、より多くの人にインド料理の魅力を届けていきたいとのこと。本場同様、バナナリーフに盛り付け、手で味わうスタイルも体験してほしいそうで、まるでインドを旅したような感覚を楽しみながら、食事だけでなく文化そのものも伝えていきたいと話します。

休日にはイベントにも積極的に出店し、スパイスの魅力を広島中に広げています。本場の味を追求しながら、地域の人々にも寄り添い、インドの文化を伝える『Spice magic』。広島でここまで“現地のインド”を感じられるお店はなかなかありません。ぜひ一度、お店に足を運んでみてください。