広島東洋カープでのプロ生活を終え、2022年12月、レモン農家へ転身した戸田隆矢さん。野球から農家という異業種のセカンドキャリアを選べたのは「自分の好きなことは何か」を真剣に考えたからこそ。戸田さんの決断は、人生に迷いを抱えた人のヒントになるかもしれません。
自給自足が夢。まずはレモンから
2022年10月の現役引退後、レモン農家への転身が話題になりました。
戸田：引退前からセカンドキャリアについて考える中で、農業には絶対携わろうと決めていました。第一次産業を盛り上げたいし、将来、自給自足で生活するという夢があるので農業を学びたいと思っています。
なぜレモン農家になろうと思ったのですか？
戸田：今のぼくには農園以外の仕事があります。レモンはほかの農作物に比べてあまり手がかからないので、仕事と農業を両立しやすいと感じたのがレモン農家でした。
今はどのような生活リズムですか？
戸田：農園にはだいたい週1〜2回来ています。木を大きく育てるため蕾や小さな実を取ったり、草刈りや水やりをしたり。農園以外の日は、メディア出演や立ち上げた自社の事業を運営しています。
自給自足への憧れは以前から持っていたのですか？
戸田：子どものころから動物や自然と触れ合うことが好きでしたね。今はレモンを育てながら農業のノウハウをしっかり学び、今後いろいろな農作物に挑戦していきたいです。
プロ野球時代は「仕事」と思ったことがない
引退を決意されたとき、ほかの道もあったかと思います。
戸田：野球の指導者やどこかの会社に就職するなどいろいろな選択肢がありました。だけど、ぼくはプロとして過ごした11年間、野球が好きで”仕事”だと思ったことがありません。お金にこだわらず好きなことをのんびりとやっていくのが、ぼくに合っていると思います。
「レモン農家になる」と言ったとき、周りの反応はいかがでしたか？
戸田：「なんでレモン？」「できるわけないだろう」と、厳しい声もありました。でも、ぼくの思いを何も知らない人の声は耳に入りませんし、結果で見せたいですね。もちろん、「いつ買えるんですか」「応援するよ」という連絡もたくさんいただきました。
広島レモンを世界へ売り出したい
農園は見晴らしの良い素敵なところですね。
戸田：高台から見渡す海と島々が並ぶ穏やかな景観に一目惚れしました。周囲は、安芸津町の赤土のジャガイモ畑。実は、ぼくのレモンもジャガイモと同じ赤土に植えました。農業の先輩たちからは「前代未聞」と驚かれています。
現役時代の経験が農業の役に立つことはありますか？
戸田：暑さに耐えられる体力と力仕事ができることです。力仕事と言っても、球を投げるほど強い力は必要ないですね。トラクターや草刈機が新鮮で、遊んでいるような気持ちで作業しています。
考えなければいけないことが、選手時代と全く違う日々ですね。
戸田：以前は勉強が苦手だったけど、今はみんなから話を聞いて学ぶのも、自分で直に足を運んで情報を取りにいくのも楽しいです。知らなかったことを知ることがめちゃくちゃ好きなんです。
今後の展開を教えてください。
戸田：広島レモンの良さをもっとたくさんの人に知ってほしい。視察で行った台湾でレモンが流行っていたので、広島レモンを海外進出させ世界中に売り出していきたいです！
人生を心地よく歩むために「自分の好きなこと」を追い求める大切さを教えてくれた戸田さん。「安芸津町に来たら、いつでも立ち寄ってください！」と野球少年のように爽やかな30歳は、レモン農園という新たなマウンドでも”全力投球”を見せてくれそうです。
