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広島ドラゴンフライズ浦伸嘉さん|「街にスポーツの文化をつくりたい」。プロバスケクラブ代表が描くアリーナへの夢

野球やサッカーをはじめとした球技、陸上、マリンスポーツにウィンタースポーツと、さまざまなスポーツになじみがある広島。そんな場所に2013年に創設された県内初の男子プロバスケットボールチームが広島ドラゴンフライズです。2020-21シーズンからは念願のB1リーグを舞台に闘い、まさに今、チームとしてクラブとしてまた一つ躍進のときを迎えています。浦伸嘉社長が考える、広島のスポーツ文化とは? アリーナへの夢とは?

クラブ悲願、B1への道のり

2020-21シーズンはB1の舞台でスタートしました。まずは昇格が決まった頃を振り返って、浦さんの率直なお気持ちを教えてください。
浦:Bリーグの開幕以降、広島ドラゴンフライズはB2リーグで闘ってきました。2019-20シーズンは勝率も良くB1昇格へ向けて着実に一歩ずつ進んでいましたが、コロナ禍でリーグの昇降格があるかどうか最後の最後まで分からなかったので、決まったときは純粋にほっとしました。
試合に多く勝っていただけに、その想いも強いですよね。
浦:そうですね、なのでとにかく安心したという気持ちです。
2020年3月、B2リーグ西地区優勝が確定。ただこのときは、B1昇格は未定の状態だった。
B1に向けてさまざまな準備をされてこられたと思います。その中でも浦さんがとりわけ力を入れていたのはどんな部分でしょうか?
浦:社長に就任してから約5年が経ちますが、超短期的な目標としてB1昇格を目指していました。やっぱりトップリーグに上がることが、クラブの価値向上への寄与が大きいと考えていたからです。それがあっての中・長期的なビジョンがあると考えていましたね。
2020-21シーズンから、念願かなってそのステージに上がりました。
浦:そうですね。これまでは個の力でいろんな場面を打破してきたところもあるんですけど、これからは組織としてより成長していかなければいけないですよね。1~2年前くらいから自分たちはそのフェーズにいると考えて、さまざまな視点で取り組んでいます。
B1昇格の報告記者会見時の浦さん。キャプテンの朝山正悟選手が同席したほか、オンラインで各選手をつないで会見を行った。

広島県民の人生に入り込んでいるということ

ドラゴンフライズは、広島初のプロバスケットボールチームですよね。地域とのつながりや先ほど言われていたような価値向上という部分で、浦さんはどんな風に考えていらっしゃいますか?
浦:まず、我々のようなスポーツクラブは、誰か個人のものではなく広島全体のものであると考えています。なので、地域の皆さんに愛されるクラブになりたいということが一番ですね。
広島って昔からスポーツ王国とよく言われていて、スポーツチームが多いですよね。さまざまなスポーツに対する親近感のようなものは、他の地域と比べると広島は強いかもしれません。
浦:これは一つの例になるんですけど、先日試合で川崎へ行ったときにも広島から新聞やテレビなどメディアの皆さんが多く来てくださったんですよ。B2にいた頃から変わらず来てくださるので、B1・B2とかは関係なくて、これが広島のスタイル。地域の皆さんがどれだけ注目しているのかということの表れだと思うんです。
チームのホームアリーナ、広島サンプラザホール。
地域に根付いている証ですね!
浦:地域に根付いているということは、広島で暮らす方の人生に少なからず入り込んでいるということ。そこを今以上にもっと深めていきたいし、チームの強い弱いという域を超えて広島を盛り上げていきたいんです。最終的には、スポーツの力で街を活気づけたり文化をつくっていきたいなと思っています。

広島らしいアリーナを

B1に昇格したということで、今まで以上に広島の人からはもちろん全国からの注目も集めますね。
浦:バスケットボール界としても、Bリーグが立ち上がっていよいよ一気に発展する手前の時期に来ているなと感じます。こうした時期は一つの通過点であって、私たちが最終的に目指しているのは広島にアリーナをつくることなんです。
アリーナ! いいですね~。ちなみにそれは、専用アリーナということでしょうか? 
浦:いえ、専用ではないものを考えているんですよ。新しくアリーナをつくってそこでバスケットをするだけでは、地域を盛り上げることはできないと思っていて。アリーナを起点に、広島らしさを伝えられるようにしていきたいんです。
広島らしさ、ですか。
浦:はい。皆さんご存じのように、広島には被爆後に復興してきたという街の歴史と背景があります。ドラゴンフライズではホームゲームでフェアプレー賞として「おりづる賞」を設けていますが、「相手へのリスペクトを大切にする」という平和にもつながるメッセージを、そのおりづる賞を通して発信しているんです。
相手への敬意がなければ成立しないバスケットボール。「おりづる賞」はその想いを表現するものの一つ。
確かに、そうした取り組みは広島だからこそできることですね。
浦:平和はもちろん広く社会に貢献していくための何かを、アリーナから発信していきたいんです。だからアリーナでは他のスポーツやイベントをすることも考えていますし、「アリーナで何かをすることが社会貢献につながる」というような認識を皆さんに持っていただけるくらいの場にしていきたいという想いがあります。
なかなか壮大な目標ですね…!
浦:現在はそこに向かって、みんなで頑張っているところです。私たちはスポーツチームなので競技力を上げるということは大前提なんですけど、クラブの姿勢としてBリーグに所属する全クラブの中でナンバーワンになりたいということを2つ掲げているんですよ。
2つ…。何でしょう、1つは先ほどからお伺いしている社会貢献ですかね?
浦:そうですね、1つは社会貢献活動の頻度や質の高さ。もう1つは子どもの来場者数です。少子化が叫ばれている中で、競技の将来的な発展という観点以外にも、子どもたちに何かしらのきっかけを与えられるクラブになりたいと考えていて。
子どもたちに関わるものだと、バスケットボール教室の開催や、昨年はオンラインで選手と子どもたちをつないでイベントも開催されていましたよね。
浦:そうですね、選手とのふれあいだったり、試合会場で迫力あるプレーを観て感動したり。街の将来の宝である子どもにとってきっかけはとても重要だと思います。自分たちが今できることとして、まずは多くの子どもたちが楽しんでもらえるものをさまざまな形で提供したいと取り組んでいます。
クラブ創設から、年々会場に訪れる子どもやファミリーが増えている。

街にスポーツ文化をつくっていく

広島CLiP新聞は「広島の人や地域をつなげる」「+(プラス)を届ける」をコンセプトにしているのですが、ドラゴンフライズが広島の人に届ける「+(プラス)」とはどんなものでしょうか?
浦:純粋に、地域の活力の源になりたいなと思うんですよね。広島にはカープさんやサンフレッチェさんのようなプロスポーツチームがあって、試合に勝っても負けても話題になる。うちの家族でも試合の話をしますし、会社とかでもそうですよね。タクシーに乗ったときも話題になりませんか?
なります! もう挨拶代わりに前日の試合結果について話しますね(笑)。
浦:それって、本当にすごいことなんですよ! スポーツ王国という話もあったように、広島は春夏は野球やサッカーなんかのアウトドアが、秋冬はバスケットボールやバレーボールのようなインドアと、1年を通してスポーツが楽しめる地域です。そこにアリーナがあればもっと身近に楽しめるようになりますよね。広島に暮らす人が、いかに普段の生活の中でスポーツをきっかけにテンションを上げてもらえるか。そこを考えて取り組むことが大事だし、それが文化をつくるということなのかなと考えています。
クラブ事務所の建物内にあるグッズショップにて。
スラムダンク世代ど真ん中の編集部員2名。クラブ広報スタッフの方に温かく見守っていただきながら、少しだけボール遊びさせてもらいました…。

取材の最後には、「文化は長い時間をかけてつくっていくものですよね」と浦さん。毎日何かしらスポーツの話題を目にすることが多い広島であっても、その可能性はさらに多方向に広がっています。アリーナへの想い、バスケットを通して発信したいメッセージ…、広島ドラゴンフライズが紡ぐ物語はまだまだ始まったばかりです。

広島ドラゴンフライズ 代表取締役社長

浦 伸嘉さん

広島出身。自らもバスケットボール選手としての経験を経て、2016年に広島ドラゴンフライズ代表取締役社長に就任。広島らしいバスケットボール文化、スポーツ文化の可能性を追求する。

広島ドラゴンフライズ クラブショップ

広島市西区草津新町2-15-17 高橋ビル1F

TEL.082-270-3006

OPEN.10:00~18:00

定休.月曜、ホームゲーム開催日

アクセス
広島CLiP新聞編集部(CLiP HIROSHIMA)から車で約25分