1897年に創業し、現在は植物乳酸菌飲料「マイ・フローラ」を主に製造する野村乳業株式会社。2023年、広島空港そばにオープンした新工場「マイ・フローラ プラント」では、一般のお客様を対象にした“発酵体験”ツアーを開催しています。広島CLiP新聞編集部員が乳酸菌の世界を体験するユニークなツアーに潜入しました。
新人研究員になりきって工場へ
“発酵体験ツアー”は、野村乳業の1日新人研究員になりきって、乳酸菌のことをより深く知ろう!というコンセプトでつくられています。所要時間は約90分。工場見学はもちろん、セミナーや体験を通して子どもから大人まで発酵の面白さを学ぶことができます。
工場前にある噴水は「ガット・シャワー」(夏季限定)。ガットは英語で「腸」という意味。人間の腸は小腸・大腸合わせて約9mといわれており、この噴水と同じくらいの長さのものがお腹の中に入っていると想像すると、不思議な気分です。
ツアーは白衣に着替えて、まず座学からのスタート。
そもそも「植物乳酸菌とは?」「動物乳酸菌とは何が違うの?」など基本的なことから解説をしてもらえます。
乳酸菌は地上の様々な場所にいますが、野菜や果物に生息しているのがいわゆる「植物乳酸菌」。漬物や味噌・醤油など、昔から広く利用されてきました。一方、哺乳類のミルクなどに生息しヨーグルトやチーズなどに使われているのが「動物乳酸菌」です。
植物乳酸菌は、動物乳酸菌と比べて消化液耐性が強く、生きたまま腸へ届くことが多いと言われています。ちなみに、野村乳業で使われている乳酸菌はラクトプランチバチルス・プランタラムSN13Tという株。広島大学との共同研究によって、この菌を使った商品開発や効果検証を行っています。
次は、発酵前と後の「マイ・フローラ」を飲み比べ。
通常、発酵前を飲むことはできないので、どんな味だろうとドキドキ。「マイ・フローラ」はニンジンと乳酸菌・オリゴ糖から作られているので、発酵前はおいしいにんじんジュースの味。一方、発酵後は酸味があるさっぱりした味へと変化していました。理由は、乳酸菌は糖を分解して酸味のある乳酸が増えるから。ヨーグルトなどがさっぱりしているのもこの理由だそう。
乳酸菌や発酵について学んだ後は、実際に商品を作っている工場内部を渡り廊下から見学します。
最初に見えるのは「発酵室」。並んでいるタンクの中に発酵中の「マイ・フローラ」が入っています。このタンクで約1日かけて発酵させ、液体中の乳酸菌を増やします。ちなみに「マイ・フローラ」の中には100mlあたり1,000億個の乳酸菌が入っていますが、実は作りたてはこの2倍の菌が生きているそう。
続いては「充填室」。1日で約1万本のボトルに充填しています。乳酸菌を生きたままお客様のもとに届けるため、工場内から梱包場所・配送過程にいたるまで、温度管理も徹底されています。
「充填室」の上の窓から少し見えるのは、品質検査や商品開発を行う「研究室」。野村乳業では、海外にも発酵の技術指導や原料の提供を行っており、ここで技術開発や品質検査を行っています。
「マイ・フローラ」が作れる発酵体験!
工場見学の後は、いよいよ「発酵体験」。非売品の「マイ・フローラ マンゴー味」を自分たちで作ることができます。マンゴーピューレ、ニンジン汁、イソマルトオリゴ糖などを計量して、ビーカーに入れて調合。ビーカーを回して、泡立てないように混ぜ合わせます。
この後、野村乳業が乳酸菌を入れて殺菌・検査などを行い、自身で調合した製品が自宅に届きます。
体験終了後は、ぜひ「マイ・フローラ カフェ」で一休みを。先ほど製造過程を見た「マイ・フローラ」を飲むことができるほか、腸活ソフトクリームなども販売しています。
おなかを育て、人々を健康に
2024年で創業127年を迎えた野村乳業の創業地は安芸郡府中町。開業当初は牧場もあり、酪農をしながら牛乳を販売していました。その後は一般的な乳業メーカー同様、牛乳、ヨーグルト、プリンなどの乳製品を製造していましたが、約20年前「マイ・フローラ」を中心とした植物乳酸菌事業に専念することに。
商品は変われど、創業以来変わらないのは”食を通じて、おなかを健康にする”という思い。
今回のツアーも「商品や乳酸菌のことをもっと知りたい」というお客様の声を受け、より腸活のことを知ってもらおうと企画したそうです。
最後に、野村さんから読者の皆様へメッセージをいただきました。
乳酸菌は株によって効果が異なるなど、編集部員も勉強になることばかりのツアー体験でした。