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尾道パパイヤ|温暖な因島で育つ、健康にもよい青パパイヤ

タイ料理に欠かせない食材の一つ、青パパイヤ。酵素や栄養素の力で健康に良く、温暖な地域で栽培されているイメージがありますよね。

その青パパイヤが、実は尾道市でも栽培されていることをご存じでしょうか?

「尾道パパイヤ」という名前で、現在は因島で栽培されています。今回は生産者の内海千晴さんを訪ねて、尾道パパイヤの魅力や栽培についてお聞きしました。

農業未経験で始めた青パパイヤ栽培

青パパイヤの栽培を始めたきっかけを教えてください。
内海:私は尾道市御調町の出身ですが、その御調町は過疎化が進んでいます。町の活性化を目的に、目新しい作物を育てたらよいのではないかという話が挙がり、最初は私の父が農業をしたいと言い出したことがきっかけです。私は子育てとともに仕事を一度辞めており、仕事復帰を考えていたタイミングだったので、面白そうと思って一緒に始めました。
数ある作物の中で青パパイヤになった理由は?
内海:若い世代の人に興味を持ってもらうことも大切にしていたので、当初から珍しい南国の作物でいこうと決まっていました。最初はマンゴーやバナナなども試していたのですが、広い土地を確保できて未経験でも育てやすく、仕入れから栽培、販売までがスムーズに進められそうという点から青パパイヤになり、御調町で路地栽培とハウス栽培を始めました。
珍しい作物だからこそ、栽培が大変そうな印象もあります。
内海:私自身農業は未経験でしたが、土いじりも嫌いではなかったし、自分でイチから育てることができるのは楽しそうだと感じました。大変さはあまり考えず、どちらかというとワクワクした気持ちで始めて、町の盛り上がりにつながればいいなと思っていましたね。
2015年、仲間とともに御調町で尾道パパイヤの栽培を始めた内海さん。現在は因島でハウス栽培に取り組む。

豪雨を乗り越え、力強く育つ青パパイヤ

今は因島で栽培していらっしゃるんですね。
内海:御調町でのスタートと同時に、因島でもハウス栽培を始めました。同じ尾道市ですが山側と海側なので気候が全く異なり、育て方も異なります。肥料や農薬をほぼ使わずに自然の力で育てようと取り組んでいますが、御調町では気温や日照時間が安定していないのでどうしても手をかけないと育てにくいです。ですが因島は温暖で、自然の力を生かしながらでも発育が良く収穫量も多いので、自分が目指す栽培の仕方ができています。
5度を下回ると枯れてしまうため、ハウス内の温度に加えて地温の管理、水分量の管理などが栽培のポイントに。
内海:青パパイヤには青臭さやえぐみがあるイメージを持っている人もいると思います。でも実際は、自然の力で育てると甘みがあって食べやすいんですよ。育て方が味に影響しやすいので、おいしいと感じてもらえる味を目指して育てています。
青パパイヤの収穫シーズンは8月中旬から12月末まで。茎の付け根の部分に実がなる。
御調町では今は栽培していないのでしょうか。
内海:2018年の豪雨で、畑が全部ダメになってしまったんです。豪雨が7月にあって収穫直前だったので、パパイヤの実はもちろん苗も全滅してしまい、売るものがなくこれからの売り上げも見込めない状況になってしまいました。そのときは気力も体力も失ってしまい、みんなで相談して御調町の畑は続けずに閉鎖するという判断になりました。
それは大変でしたね…。
内海:ただ因島の畑は、水没はしたものの栽培できる木がいくつか残っていました。御調の畑を閉鎖せざるを得ない状況に大きなショックを受けていたのですが、青パパイヤは珍しい分「なくなると困る」というお客様からの声もけっこういただいていました。お客様の存在が因島での栽培を続ける力になり、覚悟を決めて私が独立して因島で栽培を続けていくことにしました。
タンパク質や脂肪、糖質を分解する酵素「パパイン」を豊富に含み、ビタミンCやポリフェノールも多く含有する青パパイヤ。
内海:ハウス内の木は、その豪雨を乗り越えて生き残った木です。生命力がすごく強いですよね。その強さがあるから、青パパイヤは栄養価が高くて健康にも良いと言われるのかなと今改めて感じています。

おいしい青パパイヤを届けたい

尾道パパイヤはどこで購入できますか?
内海:生の青パパイヤは、シーズン中なら産直市で購入できます。尾道市の『ええじゃん尾道』、広島市の『とれたて元気市』、道の駅などで販売しています。自社のオンラインショップもあるので、ネットを利用されている方も多いですね。あとは、タイ料理店を中心に広島県内の飲食店さんへも卸しています。オリジナルの加工品は産直市や道の駅のほかに、サービスエリアや土産物店でも購入できます。
飲む酢や酢の物用の酢、ドレッシングや新商品のキムチなど、尾道パパイヤを使ってつくるさまざまな加工品。
農家さんおすすめの食べ方を教えてください!
内海:一番簡単なのは、千切りや薄切りにしてお酢につけてピクルスにすることです。1か月くらいは冷蔵庫で保存がききますし、トマトやキュウリと一緒に漬けると食欲が落ちる暑い時季にも食べやすいですよ。パパイン酵素が肉を柔らかくするので、肉を使った煮込み料理もおすすめです。肉じゃがのじゃがいもの代わりにしたり、カレーやおでんに入れてもおいしいです。生のままスライスしてお好きなドレッシングをかけてサラダにするのも良いですよ。
食べる際は、半分にカットして種を取り、皮をピーラーで剥いた後に好みの大きさに切って水にさらす。アクを抜いた青パパイヤはクセがなく食べやすい。
今後の展望について教えてください。
内海:豪雨災害を経験して、続けていくことの大切さを実感しました。今、パパイヤの実や加工品を購入してくださっている方の中には、健康管理のために続けてくださっている方が多いです。そうした方がずっと食べ続けていけるように、長く育て続けていくことを大切にしたいです。一人でやっているので頻度は少ないですが、加工品の新商品も出せていけたらいいなと考えています。初めて青パパイヤを知っていただく方にも、長く続けてくださっている方にも、おいしい青パパイヤを届けていきたいです。

「“青パパイヤを食べると体の調子が良い”というお客様からのメッセージがうれしい」と話す内海さん。豪雨の影響を乗り越え、力強く育つ青パパイヤの生命力を信じて日々栽培に取り組んでいます。今がちょうど青パパイヤのシーズン、ぜひ一度味わってみてください。

尾道パパイヤ 生産者

内海 千晴さん

尾道市出身。地元の御調町で地域創生を目指して、2015年に農業未経験ながら地域の仲間とともに尾道パパイヤの栽培をスタート。2018年より独立し、因島での栽培や加工品の製造・販売に取り組む。

尾道パパイヤ

尾道市御調町大町55-1

TEL.0848-77-0021

アクセス
山陽自動車道・尾道ICから車で約20分