
大崎下島久比地区で相互扶助コミュニティを軸とした活動を展開している「一般社団法人まめな」。そんな「まめな」の取り組みを2週連続でお届けします。前週の「まめな食堂」に続き2週目となる今回は、まめなプロジェクトから誕生した、島で唯一のケーキ屋さん「Sunny-side UP(サニーサイドアップ)」をご紹介します。
『まめな食堂』から徒歩3分ほどの場所にある『Sunny-side UP』。元みかん農家の古民家をリノベーションした長屋門の1階(右)にあります。左側にはバー、2階はカフェスペースや図書室となっています。
自分自身を見つめたことからはじまった新たなステージ
『Sunny side-UP』 CEO の佐々木正旭さん
コロナ禍に翻弄された2020年。持病の疾患もあったことから「このままでいいのか?本当に自分がやりたいことは何なのか?」と自問自答を繰り返すようになったと言う佐々木さん。どこかスッキリしない日々を過ごしていたある日、思い切ってすべてを手放し、働いていた飲食業界から身を引きました。
佐々木:その時は自分に何ができるかわからないけど、後悔のないように生きたい、と。これだけははっきりしていました。キッチンカーで移動販売を始めるのもいいなと模索していたときに、知人を介して『一般社団法人まめな』の存在を知り、ここで自分を見つめ直してみようと思いました。
まめな食堂さんの取材記事はこちら
「一般社団法人まめな」の更科安春さんがご案内してくださいました。
まめなの活動の一つ、まめなコモンズでは、『自分自身がどうありたいのか自分の内面と向き合い、心の底からやりたいことに取り組むこと』を大切にし、それぞれがやりたいことをプロジェクト化したり、事業化するなど様々な活動が行われています。これまでに自分の特徴を活かしたカフェやバー、訪問介護サービスなどの事業を展開しており、その一つが佐々木さんが営む『Sunny-side UP』です。
Sunny-side UPの開業まではどういった道のりだったのでしょう?
佐々木:開業までは時間がかかりました。自分に何ができるのか模索をしながら、まめな食堂のマネジメントに関わったり、訪問看護ステーションでの高齢者の見守りに同行してお菓子の販売を行ったり。健康教室で参加者に振る舞うこともありました。様々な形で関わらせてもらっている中で、『クリスマスケーキを買いたくても30分以上かけて島外のコンビニに買いに行くしかない』と言う声を聞いたんです。これは放っておけないなと。自分の経験が生かせるかもしれないと思い、2022年Sunny-side UPを設立し、開業する準備に取り掛かりました。ちなみに…会社名の由来は目玉焼きが大好きだから(笑)。自分が好きな物に囲まれたいという思いから付けました。
佐々木さんは、週末営業に向けてお菓子づくりに励む傍ら、まめなの一員として若者の体験学習のサポートや人材育成にも取り組んでいます。
店舗を立ち上げるまではまめな食堂の厨房を借りていた佐々木さん。住民のリクエストでクリスマスケーキを作ったり、食堂で提供するデザートを作ったりしていました。
毎月開催される健康教室でも提供。毎回「どんなお菓子を出したら喜んでもらえるか?」と趣向を凝らしていました。
ある時の健康教室では季節感溢れる「栗蒸し羊羹」を。佐々木さんが手掛けるスイーツは毎回参加者に好評だったそう。
「規格外」の柑橘類を使用したお菓子作り
大阪と広島で修行を積み、パティシエとして活動していた佐々木さんが、パティシエに憧れ始めたのは小学生の頃。当時、人気だったテレビ番組の企画で大きなプリン作りの裏技を母親と観たのがきっかけでした。そこから「いつかケーキ屋さんを持ちたい」という変わらぬ夢を持ち続け…。2024年9月、島の住民の一言に背中を押され『島で唯一のケーキ屋さん』が誕生しました。
オープン当日の様子。待ちわびていた店舗販売に多くの地元住民が駆けつけ賑わいを見せました。
スイーツ作りには規格外の柑橘類を使用しているそうですね。
佐々木:島には柑橘が溢れていて、収穫しきれずに地面に落ちてしまったものや、表面に少し傷がついてしまったもの、歪んでいるだけで規格外となり廃棄されるものがたくさんあります。その量は自分の想像を遥かに超えていて驚きました。規格外の柑橘を使用することは島の大切な資源の有効活用を始め、農家支援や地域経済の循環など、とても高い価値を持っています。これをお菓子作りに反映させないといけないと考え、商品づくりに試行錯誤を繰り返しました。
取材時も島のあちこちで柑橘類がたわわに実っていました。
八朔とはるかのタルト
レモンタルト
規格外の柑橘類を使用したメニューに加え、季節に応じて様々な種類のラインナップが登場。「今日は何がおすすめ?」と、訪れる人も楽しみにしているとか。リクエストに応じたスイーツも好評だそうです。
大崎下島で『ケーキ屋さん』を開く意味
一つひとつ丁寧に手掛けたケーキが並ぶショーケース。
佐々木:特別な日やお祝い事、ちょっとした自分へのご褒美など晴れの日に彩りを添えてくれるケーキ。もちろん普段使いでも、人々を笑顔に、そして幸せな気持ちにしてくれます。これまでケーキを買いたくてもこの島にケーキ屋さんは無く、30分以上かけて車を走らせ、島外のコンビニで購入するしか手段がなかった…。そんな環境下で地元の方々に喜んでもらえていることにとてもやりがいを感じています。「今週のおすすめは何?」なんて、楽しみに買いに来てくれる人もいて。少しは地域に根差した活動ができているんじゃないかなと嬉しく思います。
週末の営業に向けてスイーツ作りに励む傍ら、引き続きまめなの一員として、若者の体験学習のサポートや人材育成にも取り組んでいる佐々木さん。「自分にはない思考や発想に刺激を受けています」と話します。様々な経験を糧に、島の人々に喜んでもらえるような商品開発にも意欲的な姿が印象的です。

優しく穏やかな時間が流れる大崎下島久比地区。ここで地元の住民の笑顔のため、スイーツを作り続けるパティシエの自信作。2階にはカフェスペースもあり、ゆっくりと過ごすことができそうです。カフェに併設した図書館はリニューアル予定。こちらも楽しみです。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。