2022年1月末、『紅茶のお店 linden』が手掛けるテイクアウトのミルクティー専門店『linden tea with milk(リンデンティーウィズミルク)』がオープン。「広島に紅茶文化を根付かせたい」との思いでその魅力を広く伝えてきた店主・沖野隆さんが、テイクアウトで“持ち帰って飲んでもおいしい”ミルクティーを新たに提案する一軒です。
ミルクティーをもっと日常に lindenさんといえば紅茶ですが、ここはテイクアウト専門のミルクティーのお店なんですよね。
沖野: はい。紅茶を日常に取り入れてもらいやすくするにはどうすればいいかといつも考えているんですが、その一つとしてテイクアウトは魅力的だなと思っていたんです。
私自身もここ最近、飲み物をテイクアウトする機会はだいぶん増えました。
沖野: この辺りでもコーヒーを買って手に持って歩いている人とか、車の中で飲んでいる人とか、けっこう見かけます。紅茶もそんな風に、日常の中で気軽に飲んでもらえたらいいなと思っていて。
ビルの奥まった場所にある店の入り口。大きなティーポットのアイコンが目印。 それでテイクアウトなんですね。では、ミルクティーなのはどうしてでしょうか?
沖野: 紅茶も考えてはみたのですが、やっぱり紅茶はティーポットで淹れたものが一番おいしいんですよ。なので紅茶はテイクアウトではないなと思ったんです。
紅茶のおいしい飲み方を提案する沖野さんだから、そこに妥協はなかったんですね。
沖野: 一方で、ミルクティーはテイクアウトでのおいしい飲み方を提案できる自信がありました。
ひっそりと佇む隠れ家のような空間です。 時間が経ってもおいしく飲める一杯 lindenさんでもミルクティーは飲めますが、こちらのlinden tea with milkさんで出しているミルクティーとの違いはありますか?
沖野: lindenはティーポットで飲んでおいしいものを、こちらのlinden tea with milkではテイクアウトで時間が経って冷めてしまってもおいしいものを提供しています。茶葉などのクオリティーは同じですが、作り方がまったく違いますね。
スリランカ・ヌワラエリヤ産の高品質茶葉をメインに、『linden tea with milk』で取り扱う茶葉の一部。手前左はフレーバーキャラメル、右はアッサムCTC。奥はほうじ茶。 沖野: 例えば、牛乳って冷めると表面に膜が張りますよね。これはタンパク質が冷えて凝固するからなので、そうならないように作ります。茶葉の量、お湯の量、蒸らしの時間、この3つのバランスをティーポットで作るときとテイクアウトで作るときとで変えているんですよ。
なんだか、化学的な感じですね(笑)。そういえば最初にお店に入ったとき、スパイスの香りが広がっているのが印象的でした。チャイもあるんですね。
沖野: 一般的なミルクティーのほかに、チャイも用意しています。ミルクティーと相性の良い茶葉を使って、6種類のスパイスと生クリームを加えた「ビンテージマサラチャイ」がおすすめですよ。
「ビンテージマサラチャイ」の茶葉はアッサムCTC、ルールコンドラB.O.P.F、カフェインレスのルイボスからセレクト。左側は店内で販売するミルクティー用の茶葉。 しっかりスパイスが使われているのに、まろやかで飲みやすくておいしいです! 広島産のお茶を使ったものもあって、こっちも気になる…。
沖野: 世羅町の『TEA FACTORY GEN』さんのほうじ茶や、尾道市向島の『USHIO CHOCOLATL』さんのチョコレートを使ったミルクティーもあります。やっぱり広島で、真面目に頑張っている人を応援したいんです。そうした生産者さんや商品を伝えるのも、僕がお茶を通してできることだと思っています。
『USHIO CHOCOLATL』のチョコレートや広島県内で活動する作陶家の器なども販売。 一杯の紅茶が人生を変えた そもそも、沖野さんが紅茶の道に進まれたのはどんなきっかけだったのですか?
沖野: 元々は飲食店の経営マネジメントの仕事をしていたんですが、ある日一杯の紅茶を飲んだとき、あまりにもおいしくて驚きまして。「これだ!」「紅茶で人生やっていこう!」と思い、会社を辞めました。
それで紅茶の世界に。とはいえlindenのオープン時、紅茶専門店はまだ少なかったですよね。
沖野: そうですね。広島に紅茶文化を根付かせたいという思いでスタートして、約12年いろいろなことに取り組んできました。僕が考える紅茶文化は、日常的に紅茶を飲んでもらうこと。その軸となる思いがあるから、今もこうして続けられています。
店内には小さなギャラリーも併設。このギャラリーはイートインスペースにもなっています。 新店のlinden tea with milkも、紅茶の文化を根付かせたいという思いから立ち上がっていますしね。
沖野: 文化づくりって本当に大切なことです。他にもまだまだできることがあるので、この思いを共有できる方と信頼を積み重ねながら、紅茶の魅力をもっと伝えていきたいです。
例えば、車での移動中。こんな風に日々のシーンに寄り添う一杯を沖野さんは目指しています。 普段あまり紅茶になじみのない人は、気軽に紅茶を知るきっかけに。日頃よく飲む人は、もっとその世界を深めるきっかけに。『linden tea with milk』で、紅茶をもっと身近な存在にしてみませんか。