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プロレーシングドライバー 中村賢明選手|自分の信じた道を突き進む、生口島出身の若きドライバー

HTPレーシングのドライバー兼アドバイザーとしても活躍し、2024年はフォーミュラリージョナル(※1)にも参戦している中村賢明(よしあき)選手。尾道市の生口島出身の24歳で、幼い頃に衝撃を受けた世界で活躍するレーシングドライバーを目指し、日々のレースに励んでいます。そんな中村選手のドライバーにかける思いや今後についてお話を伺いました。

(※1)フォーミュラリージョナル:正式名称「Formula Regional Japanese Campionship (FRJ)」。(2020年より開催されているフォーミュラカーを使用したレース。以前のF3に相当するカテゴリで、若手ドライバーの登竜門となっている。

海外のモータースポーツ文化に魅せられて

カーナンバー28、緑色のマシンが中村選手。2024年6月29日のFRJ Round3にて。
モータースポーツを始めたきっかけを教えてください。
中村:父の影響で、幼少期からレースを観たりサーキットに行ったりしていました。5歳頃にはすっかりクルマ好きになっていて、いつかレーシングカーに乗りたいと思っていました。中でもミハエル・シューマッハ選手(※2)が強く印象に残っていて、華やかでかっこいいドライバーの世界に強く憧れたのを今でも覚えています。

(※2)ミハエル・シューマッハ選手:ドイツ出身のF1チャンピオンドライバー。幾多の優勝を記録し、まさにドライバー界のレジェンドともいえる選手。

その後10歳で鈴鹿レーシングスクールカート「SRS-K」に入校し、本格的にモータースポーツを始めたと伺っています。
中村:はい。最初は怖さが勝ってしまって人より遅かったのですが、2年目ぐらいからやっと自分の感覚をコントロールしながら走れるようになりました。2017年にはドイツで開催されたカート世界選手権にも出場しました。
17歳で海外のレースに出場されたんですね!その時印象に残ったことはありますか。
中村:日本とのモータースポーツ文化の違いに圧倒されました。ドライバーに対する熱量やレースのレベルも違っていて。特にレースでは「ぶつからないし、ぶつけない」。ギリギリだけど熱いバトル展開が衝撃的でした。その影響もあって、海外を拠点にレースで活躍したいというのが、僕の一番の目標になりました。
レースだけではなく、海外生活のすべてが中村選手にとって刺激的だったそうです。

HTPレーシングとの出会い

HTPレーシングでは2022年からドライバー、2023年から兼任でアドバイザーとしてもチームに参加。
HTPレーシングに加入したきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
中村:スクールを終了した後、カートやフォーミュラカーのレースに参戦していたのですが、2021年はレースに出られない、つまりドライバーシートの空きがない年だったんです。これはドライバーにとって選手生命を絶たれたのとも同じことで、悔しい練習ばかりのシーズンでした。そんな時同じ広島でレース活動をしているHTPレーシングに挨拶する機会があり、そこから加入が決まりました。
中村選手にとってHTPレーシングはどんなチームですか。
中村:とにかく雰囲気が良いチームで、ドライバーとしての仕事に集中させてもらえるのでとても助かっています。試合前のピリピリ感はもちろんあるのですが、それが丁度良いというか。空気が悪くなる瞬間がないので、安心して走ることに意識を向けることができています。またドライバーとしての命を繋いでもらったチームでもあるので、もっと活躍してチームに恩返しがしたいです。
FRJのレース前、HTPレーシングのメンバーから激励を受ける中村選手。
昨年からドライバーだけではなく、松下選手のアドバイザーとしても仕事が始まりましたが、その点についてはいかがでしょうか。
中村:改めてアドバイスとして口に出してみると、自分でも気付かされることがあるのでいい発見になっています。おかげで自分がレースをする際にも、外から見て感じたことに気をつけるようにしています。
どちらの役割も中村選手にとって良い刺激になっているのですね。
同じくHTPレーシングドライバーの松下選手(写真左)曰く、「中村選手のアドバイスはとても適格でありがたいです」。
HTPレーシングのイベントの様子。人懐っこい中村選手の活躍を見守っている地元のファンも多い。

一番速くてかっこいいドライバーに

中村選手が目標としている選手はどなたかいらっしゃいますか。
中村:尊敬している選手はいるけど、目標としている選手はいないんです。とにかく一番速いドライバーが一番かっこいいので、それを常に目指しています。レーシングドライバー以外の人生は考えていないし、幼少期に憧れた目標に向かってずっと進んでいきたいです。
シンプルだけど、潔くて強い目標ですね。
中村:速いドライバーはどんなマシンに乗っても適応できるし、あいつには負けてしまうと感じさせるような強みがあります。僕の強みはレース中に熱くなりすぎない、勝つために冷静でいられることだと思っているので、その部分ももっと高めていきたいです。
中村選手の今後が楽しみです。最後に応援してくれている方へのメッセージをお願いします。
中村:サーキットでしか味わえない、マシンとしての「クルマの魅力」を感じられるのがモータースポーツです。ぜひその部分に注目して応援に来ていただけたら嬉しいです。僕も魅力のあるレースができるように心掛けていきたいですし、今まで力をくださった方々に対してお返しができるように頑張ります。

モータースポーツについて話す中村選手はまるで少年のようで、自分の憧れたドライバー像に向かって一心に進んでいる様子が感じられました。2024年は自身にとっても勝負の1年になる、と話す中村選手。生口島から世界を目指す若きドライバーのレースに、今後もぜひご注目ください。

HTPレーシングドライバー兼アドバイザー / トムス FRJ ドライバー

中村賢明選手

広島県尾道市瀬戸田町(生口島)出身。10歳からレーシングカートを始め、鈴鹿レーシングスクールカート「SRS-K」に入校し卒業。その後鈴鹿レーシングスクールフォーミュラ「SRS-F」に入校し、アドバンスを終了。カート最高峰の世界選手権KZ-1や、HTPレーシングとしてスーパー耐久・岡山チャレンジカップに参戦。2024年はトムスフォーミュラより、フォーミュラリージョナルに挑んでいる。趣味は国内旅行、愛犬と遊ぶこと。