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野菜ソムリエがつなぐ「街と畑」|むすぶ広島 花井 綾美さん

一般社団法人むすぶ広島 代表理事の花井綾美さん

「畑って美しい!」庄原市の雪景色で見た白菜畑に魅了され、コピーライターから野菜ソムリエに転身し、野菜に携わる仕事をスタートした花井さん。地域と人と人をつなぐコーディネーターとして広島の食と農が元気になる取り組みをされています。精力的に活動される花井さんの原動力について、お話を伺ってきました。

伝統野菜を守り、農業を地域で支える

むすぶ広島とは、どのような活動や取り組みをされているのですか?
花井:私たちは、食と農と地域をつなぐコ-ディネーターとして、広島に古くから受け継がれている伝統野菜の普及活動や、頑張っている農家さんを支援する取り組みを行っています。
生産者さんにおいては、畑を守り野菜を育てていくだけでも大変だと思うので、花井さんの支援はとても助かりますね。
花井:2020年から安佐南区の伝統野菜「祇園パセリ」の認知度を高めようとキッチンカーでマルシェに出店などしています。
「祇園パセリ」のキッチンカーで応援活動の様子
イラストもかわいくて、とても目を引くキッチンカーですね!
花井:現在はJA祇園支店さんに看板代わりとして置かせてもらっているのですが、皆さんから注目を浴びてうれしく思っています。

※祇園パセリの紹介記事はコチラ

花井:また現在取り組ませていただいているのが、130年の歴史がある伝統野菜の「広島菜」です。
広島で漬け物といえば「広島菜」が有名ですよね。
花井:安佐南区川内地区の30〜40代の「川内若農家の会」というグループがあって、受け継いだ農地を守り、伝統野菜を未来へつなぐための新たなチャレンジをしています。
「川内若農家の会」マルシェ出店での様子
若い方たちが受け継いだ農地を守り、未来へつなぐってすてきな取り組みですね。
花井:昔と比べると、漬け物を食べる習慣やお米を食べる人口が減ってきているので、広島菜の活用方法などを一緒に考えていくことになりました。また、一般に流通する野菜の種子は、ほとんどが品種改良されたF1種ですが、広島菜は地域の風土や気候などに適応したもので、在来種といいます。そんな価値のある野菜が、広島県内にわずかながら残っていて本当においしいんですよ。もっとたくさんの方に、伝統野菜を知っていただきたいですね。

ターニングポイント「畑って美しい!」

むすぶ広島を設立されたきっかけや背景について教えてください。
花井:もともとは、コピーライターをしていました。お仕事をたくさんいただいて、とても充実していたのですが、その反面、締め切りに追われる日々で50歳目前に、鶴が羽をむしって機を織り丸裸になっていく感覚になったんです。
とてもお忙しい日々だったのですね。
花井:そんな中、庄原市の自治体から農産物のホームページを作りたいと依頼があって、雪の日に農家さんを尋ねました。そこの畑で見た白菜は、冷気を含んでパリパリでイキイキとしていて。こんなに美しいものがあるのかと感動したのがきっかけです。
自然の美しさを目の当たりにして、まさに運命の出合いですね。
花井:私自身とても疲れていたので、生気をもらったような気がしました。そこで、野菜に関わる仕事がしたい!と直感的に思い、その足がかりとして野菜ソムリエの資格を取り、2011年に野菜ソムリエ上級プロの資格を取得しました。
当時は、野菜ソムリエって珍しかったのではないでしょうか。
花井:そうなんです。当時は全国でも数が少なかったですね。野菜ソムリエの資格取得後には、食のセミナーや食育活動を行いました。そんな活動が認められて、広島県の「健康大使」に任命していただき、その後、中国新聞のコラム連載、各メディア取材、講演会の依頼や、料理講師など、幅広く活動させていただきました。
2012年1月の中国新聞掲載
「100万人の幸せごはん」講演会での様子

「食と農を結ぶステージ」をつくる

花井:これまで約10年間、依頼を受けて仕事をすることが多かったのですが、これからは胸に温めていたやりたかったことを実現するため、2020年5月に一般社団法人むすぶ広島を立ち上げました。
その後「街と畑をむすぶマルシェ」を開催し、大盛況だったそうですね。
2020年10月に基町クレド パセーラ6階にて「街と畑をむすぶマルシェ」を開催
花井:人と人をつなぐことで何かが生み出されたり、思いが結ばれるのがうれしいです。今後も「縁」を大切にして、「むすぶ広島」が橋渡し的存在になるようにしていきたいですね。
今後の展開は、どういったことを描かれていますか?
花井:私たち生活者と生産者の距離を縮め、農業への理解を深めていくことですね。コロナ禍、戦争、資源不足などさまざまな問題が起きているなか、やはり私たちの根本を支えてくれるのは食料を供給してくれる農業だと思います。みんなで「農業を応援しよう!」という風を吹かせたいですね。
花井さんの著書「100万人の幸せごはん」「空飛ぶ野菜ソムリエ 世界の旅ごはん」
2023年5月に「広島菜」の本出版予定とのこと。楽しみですね!

情報がありふれている現代社会からちょっと目をそらして、農業や畑の自然界に触れることで救われることがあります。農家さんの高齢化や後継者問題など、たくさんの課題があるなか、輸入野菜に頼らざるを得ない状況となる前に、私たち消費者が野菜を積極的にとり、農業に関心を持つことが豊かな食生活につながる一歩ではないでしょうか。

一般社団法人 むすぶ広島 代表理事

花井 綾美さん

国立広島大学教育学部卒業後、フリーランスのコピーライターに。世界30か国以上、食をテーマに旅をしながら、野菜ソムリエ上級プロの資格を取得。講演講師、料理講師、食ライターとして地産地消、スローフード、食の安全安心などをテーマとしたより良い食を広める活動を行っている。