
皆さん、「ちゃん系」中華そばはご存じでしょうか。東京都神田で生まれたどこか懐かしい醤油ベースの中華そばです。2025年月6月、広島市から安芸高田市に続く県道54号線沿いに関東以外では初出店となる「ちゃんのれん組合」加盟の中華そば店が登場しました。

県道沿いのドライブイン「峠の茶屋」内で、地元で30年間愛され、惜しまれつつ2024年に閉店した『ラーメン霧切谷』(きりきりだに)。その外観のままに、峠の茶屋とさらには地元を守り、盛り上げようと立ち上がったのは広島式汁なし担担麺店を運営していた渡部崇さん。
互助会組織「ちゃんのれん組合(※)」に加入し、加盟店として毎月の情報交換、勉強会にも参加。組合の名前を背負い、理念に基づいた中華そばを提供しています。「東京の日常を広島に持ってきたかった」と地元愛に溢れる渡部さんに、地域活性化への思いや、峠の茶屋で展開する意味、そして中華そばへのこだわりを伺いました。
※【ちゃんのれん組合】
「ちゃん系」ラーメンは、東京都の神田駅ガード下で創業した「神田ちえちゃんラーメン」が原点。「ちゃんのれん組合」は、「神田ちえちゃんラーメン」にルーツを持つ、他2店舗が発起人となり2022年に発足した組織。「加盟店の継続かつ繁栄を目指し、親睦及び中華そば、もり中華の文化の発展と認知度向上」を目的としている。
東京の日常を広島に。「いつものラーメン」を慣れ親しんだ場所で

長きにわたり親しまれてきた『ラーメン霧切谷』の外観をそのまま使用し『八千代きりちゃんラーメン』をスタートさせた渡部さん。そこには地元の人々にも変わらず安心して足を運んでほしいという願いと、使命だと感じている「情景継承」がありました。

「ちゃんのれん組合」の味を守る正統派中華そば

こちらで提供するメニューは中華そば、チャーシュー麺、ネギ中華そばの3種類。ネギ中華そばは、地元の「ハコサン農園」(安芸高田市八千代)が、山から流れ出る冷水で育てた白ネギをふんだんに使用し、名物となるほどの人気だそうです。
そしてなんと!平日は朝7時からオープンしており、朝ラーが楽しめます!

【ちゃんのれん組合】の中華そばは、醤油ベースのあっさりした清湯スープ、中太のちぢれ麺、たっぷりのチャーシューが特徴。
ベースとなる清湯(チンタン)スープは、鶏ガラや豚骨などをアクを取りながら時間をかけて煮込み、素材の風味を活かしつつ、雑味を取り除いていく上品で繊細な味わい。ネギの香味が臭みを取り除くのに一役買っています。
ふんだんに盛り付けられたチャーシューは、朝3時30分から店内で仕込み。注文が入ってから切りたてを提供しています。

スープもチャーシューも「その日に作ったもの」を提供しています。
正統な【ちゃんのれん組合】の味を忠実に作るべく、お店の味がぶれていないか確認するため、月に一度は東京に出向いているそうです。

塩味をしっかり感じるスープとチャーシュー。一口目には「しょっぱいかも?」と思ったのも束の間、くどすぎないスープと塩味のバランスが心地よく箸が止まりません。
新宿だるま製麺が提供する平打ち麺は、モチモチの食感ながらツルっと滑り込むのど越しが抜群。麺に絡めながらスープの味を最高の状態で口まで運んでくれます。卓上には酢やにんにく、辛味調味料もあり味変もおすすめです。

峠の茶屋に息を吹き込み 情景の継承を目指す

「近い将来には朝6時オープンを実現したいと思ってるんです」と渡部さん。地元の人々はもちろん、かつて峠の茶屋に立ち寄っていたドライバーの方にも中華そばを楽しんでもらうには現在の7時では遅いんだとか。「でもそうなると、何時から仕込んだらいいのかな」と無邪気な笑顔が印象的です。

「地域活性化とは、新しいものを作ることではなく、今あるものを残して繋いでいくこと」と渡部さん。朝の農作業が終わった後、中華そばを食べにふらっと立ち寄る地元の方も多いそうで、渡部さんの思いが浸透していることが伝わってきます。
どこか懐かしいこの情景とこの味。ホッとするこの場所へドライブがてら触れてみてはいかがですか?