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South in North(サウスインノース)|廃校から始まる北広島町の新たな未来

広島市内から車で約1時間。北広島町のカフェ『South in North(サウスインノース)』は、廃校となった校舎を再活用し、地域の活性化へと繋げる「旧南方小学校再生プロジェクト」の拠点でもあります。カフェやコミュニティ、レンタルスペースとしての活用を通して、再び地域のみなさんが生き生きと集えるよりどころへ。そんな温かな挑戦の取り組みをご紹介します。 

思い出の場所から発信し賑わいを取り戻す

旧南方小学校は少子化による統廃合の波を受け、2013年に廃校。その際、地元で事業を営む本田正博さんが町から校舎を無償で借り受けました。生まれ育った大切な故郷を地域の方々と共にボランティアとして、地域活性化に励んでいました。

株式会社キタヒロ 代表取締役 本田正博さん(右)と娘の本田花さん(左)。
花さんは主にカフェの切り盛りとSNSの動画配信でPR活動を行っています。
本田:娘が小学校2年生の時には、全校児童は17人、同級生は1人しかいない状態でした。少人数で行き届いた環境ではありましたが、社会に出るための教育としては限界があると不安もあり、考えた末に「小学校を統合しよう」と提案したんです。南方小学校は私と父、娘の3世代がお世話になった小学校でもある思い出深い場所。ここを守り、活性化していかなければいけないと強い思いと責任を感じました。

長年、地道な活動を続けながら、持続可能な仕組みを作るため組織化を決意した本田さんは、2020年に地元の賛同企業4社と共に「株式会社キタヒロ」を立ち上げ、代表に就任しました。さらに、2024年には南方地区振興会や北広島町も参加する官民連携型の再生プロジェクト「旧南方小学校再生プロジェクト」がスタートし、中心的担い手として牽引しています。

校舎1階にあるカフェ『South in North』。隣にはパン屋『プチヘルメース』が営業展開しています。

プロジェクトが本格的に始まって2年が経過し、校舎の各部屋も様々な用途に対応できるよう、生まれ変わっています。校舎1階には地域食材を使ったフードロスに挑戦するパン屋『プチヘルメース』(2025年1月)、花さんが切り盛りするカフェ『South in North』(2025年5月)がオープン。さらに様々な教室がワークショップやオンライン研修など多目的に使用可能なレンタルスペース、コミュニティスペースに生まれ変わっています。

こちらは、広島工業大学環境学部 建築デザイン学科の学生が「空き教室リノベーションプロジェクト」の一環として手掛けたフリースペース。職員室だった部屋が生まれ変わりました。何度も打ち合わせや地元住民の聞き取り調査を行い、神楽をモチーフにした作品が完成。学生たちの思いが伝わるあたたかい空間です。

校舎2階は、サテライトオフィスとしての開放を計画中です。校舎内はすべてWi-Fi環境も整っています。

さらに、地域や世代を繋ぐイベント事業も積極的に行っています。広島市安佐南区の保育園と提携し、園児やそのご家族を招いて、隣接する田んぼでの「田植え体験」や「稲刈り体験」を定期的に開催。さらには「山遊び体験」や、近くに流れる川の向こうから花火を打ち上げる「夏祭り」など、年間を通して季節ごとのイベントを企画しています。かつて真っ暗だった廃校に再び子どもたちの元気な歓声が響き渡る光景はまぶしく、地域の大人たちにとっても大きな励みとなっています。

園児とその保護者を招いて開催された田植え体験。泥んこで挑む体験は子ども達の心にしっかりと思い出を刻みます。

給食室から香るスパイスの香り、図工室だった場所で味わう特製カレー

『South in North』はかつての図工室をリノベーションしたスペース。床の張り替えや黒板の塗装などは、スタッフのDIYで仕上げられたもの。石造りの流し台や当時の棚などがそのまま活かされており、一歩足を踏みに入れるだけで「エモい!」と声を漏らしてしまうノスタルジックな雰囲気が漂います。

図工室の面影を残しつつも、壁面には黄色や緑といったポップな色彩が施され現代的で明るい店内。そのギャップが、訪れる人の心をワクワクと弾ませてくれます。

懐かしい空間で提供される看板メニューは、花さんが腕を振るう2種類のチキンカレー。6種類のスパイスを絶妙にブレンドした「サウスカレー」は家庭では真似できない本格派の辛口、そして、りんごと蜂蜜を使った甘めでマイルドな「ノースカレー」が楽しめます。

欧風ビーフカレーのセット、「ノースカレー」。白米か十六穀米が選べます。
カレーとキッシュ、どちらも楽しみたい方におすすめなのは「キッシュのミニカレーセット」。サラダ・コーヒーゼリー/ヨーグルトもついた大満足のメニュー。
花:祖父の自家農園や、地元の農家さんから仕入れる新鮮な野菜を中心に使用しています。最初はカレーからのスタートでしたが、「高齢の方にはスパイスが少し強いかも」と、現在は、キッシュセットなど年齢問わず楽しめるメニューを展開しています。
お天気の良い日は校舎裏に流れる川のせせらぎに耳を傾けてみるのもいいですね。

いずれは誰かの「住みたい街」へ。愛する地元の魅力を伝え続ける

町内外の方々に「住みよい環境」を整えるため、本田さんが手掛けるもう一つの場所が、花さんの名前が由来となった、『カジュアルキッチンHana(ハナ)』です。2020年11月にオープンした同店は、長年地元に愛された店を受け継いだもので、通り沿いの好立地を活かし、地元の中高年層やお年寄りから絶大な支持を集める地域に根ざした拠り所になっています。

『Hana』を切り盛りする奥さまの本田百合さん(左)とスタッフの神崎秋穂さん(右)。百合さんは「自分が食べたいもの、おいしいと思えるものを提供しています。飽きないように工夫を凝らしたいから、一回でなくなるメニューも」と笑います。
ボリューム満点の「ミックスランチ」。エビフライと手作りハンバーグ、フレッシュなサラダと惣菜もついた一品は『Hana』の人気メニュー。完売する日も珍しくありません。

提供されるメニューは、既製品をほとんど使わない手作りの温かい料理。エビフライ、唐揚げ、ハンバーグが一度に楽しめるボリューム満点のミックスランチや、栃木県から直送されるお肉を自家製タレで味わう焼肉ランチなど、丁寧な仕事が光るメニューが並びます。

特にこだわっているのが、お米と具沢山のお味噌汁。米は「第一回全日本お米グランプリ」で銀賞を受賞した、地元の『農事組合法人きつぎ』のコシヒカリを使用。季節ごとに味噌や具材を変えるお味噌汁とご飯は、なんと食べ放題。食後のコーヒーサービスもあり、家庭的な雰囲気の中で町内外のリピーターが後を絶ちません。

提供されるコシヒカリは、豊かな源流の水と寒暖差のある山間気候に育まれ、強い旨味と安定した品質が特徴で、強い粘り、優れたツヤと香り、噛むほどに甘味が広がります。
レトロな雰囲気のカフェでゆっくり流れる時間を堪能。座敷もあります。

『South in North』や『Hana』が紡ぐ思いは、人々が交流し賑わう場所づくり。それがきっかけとなり、北広島町の未来へと繋がっていきます。

本田:最終的には、北広島町っていいところだな、ここに住みたいなと思ってもらいたい。そういった点ではこの廃校再生プロジェクトのポテンシャルは無限大。世代を超えた人々が集い、賑わい、笑顔になる…。そんな場所となるように、まだまだ道の途中です。

2013年の廃校から始まったこの挑戦。かつて子ども達の賑やかな笑い声で地域を照らしていた小学校は、愛する故郷を守りたいという人々の思いと、多くの人々の応援によって、北広島町の未来を創り出すハイブリッドな「賑わいの拠点」へと進化し続けています。

South in North(サウスインノース)

山県郡北広島町南方1918(旧南方小学校)

TEL.090-7776-8661

OPEN.11:30-14:30(LO14:00)

定休.日・月・火曜

アクセス
中国自動車道・千代田ICより車で約7分

カジュアルキッチン Hana(ハナ)

山県郡北広島町有田989-1

TEL.0826-72-8878

OPEN.11:00-14:30(LO14:00)

定休.土・日・祝日

アクセス
中国自動車道・千代田ICより車で約2分