彩り豊かな洋菓子がショーケースに並ぶ「ケーキハウス アリス」。デコレーションが美しいケーキを丁寧に焼き上げるのは、パティシエの島本俊寿さんです。前職の自動車整備士では、技能コンクールに出場するほどの腕の持ち主。自動車をメンテナンスしていたその手が、繊細なケーキ作りに向けられて32年がたちました。
「おいしいものを安く地域の人に」先代の思い受け継ぐ
「不思議の国のアリス」の世界から飛び出してきたような素敵な店内ですね。
島本:先代は当店を立ち上げる前、ベーカリーのアンデルセンに勤めていました。「アンデルセン」といえば童話ということで、先代が好きだった「不思議の国のアリス」に決めたと聞いています。
島本:だいたいケーキ25種類、焼き菓子30種類を常時販売しています。
全部おいしそう。おすすめの商品はどちらでしょうか?
島本:人気があるのは「究極のモンブラン」。風味が豊かな茨城県筑波産の栗を使っています。リピーターも多いので、秋だけじゃなく一年中作っています。
島本:大崎下島のみかん蜂蜜を使っている「時計うさぎのバターケーキ」もおすすめです。お客様から「どこよりもおいしい」と言っていただけるのでうれしいですね。
島本:先代から「おいしいものを安く、地域の人に提供する」という思いを引き継いで営業しています。できるだけ値上げせずに続けたいですね。
自動車整備士からパティシエへ
島本さんがパティシエになったきっかけを教えてください。
島本:結婚するとき、ケーキハウス アリスの創業者である義父に「手伝わないか?」と誘われたことがきっかけです。当時26歳でした。
それまではディーラーに勤めていらっしゃったと聞きました。
島本:自動車整備士として6年間働いていました。限られた技能者だけが参加できるディーラーの技能コンクールにも出たことがあるんですよ。
それほどの腕を持ちながら、思い切った転職でしたね。
島本:不安もありましたが、昔から夫婦で切り盛りしているお店に憧れを抱いていました。妻も義父のお店を手伝っていましたし、家族で協力して働くことが楽しみな部分もありました。
島本:師匠である義父にいろいろと教わりましたが、最初は覚えることで精一杯でした。でも、元々手先を使うことが好きだったので、苦労したという気持ちはないですね。
島本:前職の自動車整備士は完全に裏方の仕事。だけど、今の仕事は自分で考えて作ったものが目の前で売れていきます。その光景を見るとうれしいし、楽しいですね。
今後、お店が地域にとってどんな存在になったらいいなと思いますか?
島本:これからもお客様に「おいしい」と言われるお店にしていきたいですね。事業を拡大し過ぎて「味が落ちた」と言われるとさみしいので、現状のまま私の目の届く範囲で今の味を守っていきたいです。
「自分が口にして納得した材料しか使わない」と、おいしさへのこだわりを話す島本さんに自動車整備士の面影はありません。ただ、細部まで誠実な作業が求められたであろう当時の経験は、きっとパティシエの今に生かされています。見た目にも味にも、島本さんのこだわりが詰まった「ケーキハウス アリス」のケーキ。ぜひ食べてみてくださいね。